最終話 旅の終わり
出発して、今日で18日目。
ゴールのジャイサルメールまで35km。
今日が最後の日だ。
早朝5時、気合いを入れてスタートを切った。
眠たい金太郎に今日も鞭を打つ。
もう少し、もう少しで夢にまで見たジャイサルメールに到着する。
今日という日は特別な日。
でも、やることはいつもと変わらない。
ただ、どっしりと前を見据え、ひたすら足を進めるだけだ。
日が昇り、沈んでいく。
それをただ見つめていた。
登り坂を登りきり、太陽が沈みかけたのを見たとき、そこに街が現れた。
「あれがジャイサルメールだ。」
東、太陽が昇るプシュカルから、
西、太陽が沈むジャイサルメールへ。
600km18日間の旅が終わろうとしている。
沈む夕日を眺めながら、この旅を思い返す。
ラクダ旅を思い付いて、ワクワクに満ち溢れたあの日。
ラクダを目の前にして、恐ろしくなって逃げたあの日。
諦めきれなくて、戻ってきたあの日。
クリスマス、街が幸せに包まれているなか、部屋に籠って、踏み出せない自分に泣いたあの日。
友達に、「だせぇぞ」って背中を押してもらったあの日。
不思議と思い出すのは、旅中の辛かったことじゃなくて、出発前、もがいていた自分だった。
出発前、どんな苦しいことが待ってるだろう。
それに耐えれなかったらどうしよう。
その恐怖に怯えてた。
だけど、今思い返すと、一番苦しくてどうしようもなかったのは、自分自身の可能性を踏み潰そうとしていた、出発前のあの時だった。
街はどんどん近付いてくる。
心臓が高鳴る。
「金太郎、金太郎、やったんや、ついに、ついにやったんや!」
金太郎は変わることなく進む。
ゆっくり、でも確かに進む。
気付くと目の前にはジャイサルメールの看板が立っていた。
その瞬間、足が震えた。
押さえても止まらないような震えだった。
それが、この時の喜び全てだった。
「この旅をして何になっただろうか。」
そう考えると、笑えるほど何もない。
ラクダはどう扱うか。
何を食べるか。
野宿はどんなところがいいか。
おそらく、もう一生使うことはないだろう。
何の学びになって、どう成長したか。
それも分からない。
ただ、これだけは言える。
足が震える喜びがあった。
ってこと。
ほんまに、それ以外ない。
そして、それが何よりも満足だった。
何の為に、とか、誰かの為にとか、
楽しいって何とか。
僕はそうやって悩むのが好きな人間なんやけど、
生きるってもっとシンプルだ。
悩むこと、行き詰まること、多分これからたくさんあるだろう。
でも、これから道に迷った時には必ず思いだそう。
「あぁ、僕は、こんな風に足が震えるような喜びを感じる為に生きていたい。」
そうこの旅の終わりに思ったことを。
到着して友達に連絡した。
「生還しました!」
そしたら、
「おかえり」
って返ってきた。
どうやった?とか、おもろかった?とかじゃなく、ただただ「おかえり」って。
あぁ、生きて帰ってよかった。
いや生きて帰るだけでよかったんだなって、幸せに包まれた。
そしたら、旅を支えてくれたみんなの顔が思い浮かんだ。
神じいちゃんとか、ジジイ・テレサとか、道で支えてくれたたくさんの人たち。
「あなたたちの支えがあったから、生きて帰れました。ほんまにありがとう。」
到着して2日後。
金太郎はジャイサルメールの売人に引き取られていった。
金太郎の首を思いっきり撫でて言った。
「ありがとう、ほんまにありがとうな。お前のお陰でゴールできたんや。」
金太郎は何も言わずに、ずっと遠くを見据えていた。
「そうやな、お前にとってゴールなんて無いんやな。」
そう言った後気付く。
「僕もゴールなんてないはずや。」
次の日、僕は別の街まで、電車で移動していた。
窓際で、ボーッと外を眺めていると、木が生い茂っていた。
「あっ、これ金太郎、うまいやつや!めっちゃ生い茂っとる!!」
そう思うと同時に、もう金太郎はいないことに気付く。
あぁ、終わったんやな。
「また、ぼちぼち、歩きだそうかな。」
今度は自分の足で。
って、終わればかっこええやん。
バカヤローーーーーーー!!!!!!!!!
そんな格好よくないねん!
最終話、なかなか投稿できひんねーん!
この文章、ほんまは大分前にできとったねん。
このラクダ旅を終えた時に書いてたこと。
これで間違いないねん。
やけどな、やけどな、
今全然ちゃうねん。
終わった時の自分と今の自分のギャップがすごいねん。
見たい?
見たい?
これよ。
一日中、ぐだって、
もぬけの殻やねん。
あの時の思いは色褪せていって、
今は進む気力がないねん。
やから、今の気持ちじゃなさすぎて、
投稿するの嫌やったんやけどな。
やけど、区切りの為にも載せる。
今回の旅で気付いた。
ほんまにおもろいことやるのは、マジでしんどい。
それが、これから生きていく先に、永遠につづく。
ビビって、言い訳して、また戻ってきて。
こんな、繰り返しやねん。
果てしないわ、マジで。
でもな、こうして書いてる今も確実に思う事がある。
「もっともっと幸せを感じたい。」
やから、あの時の手応えを頼りに、次に進んでいく。
気持ち作って、次にいくで。
よーし、終わり!!!!!!