インドラクダ旅 第二話 思うてたんと違ーう!!

金太郎にまたがり、誇らしげな気持ちで悠々と歩む僕がいた。

どんな冒険が待ち受けているんだろう、そんなワクワクと共に。

旅路の情報をくれたおっちゃんは言った。




『砂漠を歩いて村を目指す』




静寂に包まれ、そこで聴こえるのは、ラクダと僕の息づかいだけ。

広大な砂漠の中、僕は自分自身を見つめる。

完全な孤独の中、僕は僕自身と語らい、新たな自分を見出だしていく。
















はずだった。

はずだった、

はずだったんだ。









出発した街を抜けた。













おっと、早速、村が現れた。

そうだよなー、ここは大きな観光地、プシュカルの近く。

近くに村があるのも無理はない。





村を抜ける。











おやおや、また村がやってきたぞ。

さすがプシュカルやなー、商売で溢れてる証拠よ。




村を抜ける。













あらやだ、また村がやってきたよ。






村を抜ける。






おやまあ、また村が…






っておいこらー!!!!!!!!!

村ばっかやないかーい!!

どこに砂漠があるんじゃーい!!



嫌な予感が頭を過る。

『も、もしや…』



予感は的中した。

そう、インドには


『砂漠なんてなかった』


のだ。



そこではっとする。

世界第二位の人口を誇るインド。

その人の数は半端ではない。


電車に乗れば分かる。

ジェネラルクラスと呼ばれる、最も安い席。

そこは、地獄と見まがうような空間。

電車の上の方にある鞄置き場にすら人は座り、無いスペースを押し合いへし合い。

時には出発後に、溢れだした人々が車体から落下する。

残るのは落下した人々の呻き声にも似た悲痛な叫びと、生き残った人々の恍惚な笑み。

まるで、奴隷列車のようなのだ。

電車に乗るのすら、命懸け、そのくらいインドは人で溢れかえっているのだ。



その人々が住む場所をこしらえる。

すると自然と人々は溢れかえり、住めるはずもないような場所にまで、家が存在する、それが集まり村と化す。


いや、出発前におっちゃんが言った事は間違っていなかった。

砂漠(というか荒野)の中に、人が無理矢理住んでいる。


ってことはだ、

僕はこれから、とどまることのないインド人たちの視線を浴びながら、600kmを切り抜けていくことになる。





終わった。






『静寂の中で自分と語るお洒落な日々』

その夢は儚く散り、

『インドにまみれて、まみれて、まみれ倒す日々』

が始まったのだ。

せっかく気持ちを孤独モードに切り替えてたのに。

時間を返せー!!




考えてみてほしい。

訪れる村は、観光客など訪れるはずもない村。

そんな中を、ただ歩くだけならまだしも、

へんてこな日本人が、ラクダに乗って歩いてるのだ。

加えて、相手は世界でもトップクラスの好奇心を持ち合わせるインド人。

どれくらい注目を浴びるか。

今考えてもらった1000倍は視線を浴びるといっても過言ではない。

まるで、ジャイアンツの優勝パレード。

ひとときならいい。

それが毎日ずっととなると。

このボディーブローが後々に効いてくることとなる。



物凄い視線を浴び、慣れないラクダに悪戦苦闘している間に、初日の日は暮れた。

寝床を探さないと。

とにかく、人目につかないとこを、

そう思い、村の奥地の荒野にたどり着く。



『ここなら大丈夫やろ。』



落ち着いたところで火を起こす。

ガスなど持ち合わせていないので、飯を食べるのひとつにしても、火から起こさなければならない。(マッチは使うよ。笑)




長い一日に終わりを告げる。

大きく変わった旅。

本当にやりきれるんだろうか。

遠のく意識の中、



『おーい、お前なんしとーと?』



まじかよ、こんなとこにもおるんかい。

落ち着かない気持ちで眠りについた。






翌朝、目覚めると、衝撃の状況が目に飛び込んでくることとなる。












出発前: http://masahirourabayashi.hatenablog.com/entry/2017/01/03/111033

第一話: http://masahirourabayashi.hatenablog.com/entry/2017/01/26/183646