第一話 出発

1月4日、僕はラクダと共に旅に出た。

600キロ、18日間にわたる大冒険に。




インドをどう旅したら楽しいかな、あ、そうやインドにはラクダがいる!

そんな簡単な思い付きでインドまでやってきた。

5年前に一度インドを訪れたとき、ラクダがいることを知った。

その時のキュートなラクダが僕の心にはあった。

おもろい旅になりそうやな、そう思いながらインドの街、プシュカルへやってきた。

なんでもこの街、プシュカルでは年に一度インド中のラクダが売買されるラクダ市というものが開催されているらしい。

とりあえずこの街にいけばラクダが買えるはずだ。

そう思いながら、プシュカルへやってきた。


そこには確かにラクダがいた。

が、ここで話が変わる。

いや、まじででかすぎっから!

こんなでかかったっけ、いやいや、まじすか。

加えて、なんかほとんどのラクダが暴れとる。

口から泡吹いて叫んでたり、

なんか胃袋か分からんけど、口から出して怒っとる。

いやいや、こんなんやなかったってラクダ。

もっと可愛かったから、予想してたんと違うんすけど。

一人のラクダ使いに聞く、なんで怒ってんのよ、ラクダさんは。

驚きの言葉が帰ってくる。









『発情期だからね、あんま近づくと噛まれるよ、気を付けな』













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こんな感じ。








え、まじすか、なんって?

発情期?

終わった。

もうそりゃ一年に一度の発情期。

しかもこういうとこにいるラクダはほとんどがオス。
(メスは村で飼われてて、子どもを産むのに専念するらしい)

もームラムラして爆発しちゃってるよね。

あーこれはあかんな。

運が悪かった。

他の時だったらね、やれたんやけど。

そう言い聞かせて、一度退散した。



それから、2週間他の街を旅してたんやけど、どうしてもずっとラクダのこと考えてしまう。

完全に恋をしていた。笑

そんときに、友人と電話してるときに言われたことばを思い出した。

『まあ、大体のことはやってみたらどうってことないよな』

『やってみて、止めたらええんやない?』

そうや、ここで止めたら出来たか出来んかったか分からんやん、あかんかった時に初めて諦めればいいんや、そんなに人生詰んでない。

別の行き先の電車のチケットを取っていたけど、こういう事は新鮮さが大事。

またビビる前にとっとと始める。

急いでプシュカルへ戻る。



そこから、2週間くらいラクダに没頭した。

数々のラクダツアー会社を回って、ラクダについて聞いて回った。

どういうラクダがいいラクダ?

年はどうやってわかる?

使い方は?

値段は?

いろんなラクダに乗った、調べた、

けど、

全くわからん!

そりゃラクダ商売人が相手。

簡単には手の内を明かさん。

もうどのラクダに乗って歩いてても、

『そのラクダは病気だ、うちのを買え』

そればっかいわれる。

もうほんと、何が正しいかわからんし、誰が正しいこと言ってるか分からん。

そうしてるうちに、頑張って高めた勇気がしぼんでいく。

あかん、これはあかんぞ、

もういつまで経っても分からへん。

多分こういう時はアホにならんといけん。

上手に騙されないようにやろうとしても、いつまで経ってもやれん。


決めた、今のってるラクダにする!

後ろ髪が金ぴかに光ってる、おとなしめのラクダ、こいつを金太郎と名付け、即決した。


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ラクダで旅をしている人たちはいる。

ラクダの商売人たちだ。

ラクダの商売人たちは、別の街のラクダを買って連れてくる。

その旅路を参考にする。






かつて、その経験がある人たちから情報を集めた。






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・これが目的地までに通過する村の名前。これを訪ねながら進む。

・目的地は約600km先のジャイサルメールという街。


・そこまでは砂漠地帯が広がる。

・ほとんど飯屋はないから、自炊。

・宿もないから、野宿。

・食料と水は途中の村で調達できる。

・ラクダの御飯は村で買える。一日300円くらい。


ラクダの御飯代が俺の飯代よりも高いことに笑うしかない。








インドに着いてから約1ヶ月。

ようやく出発の時がきた。

どんな旅になるんやろうか、思い描いたのは広大な砂漠をラクダと共に歩む壮大な20日間。

の、はずだった。