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第四話 金太郎お前もう捨てたる!

病気のラクダ。

それが判明してからの心細さが半端やない。

それまで気にしていなかったけど、金太郎の遅さが気になるようになった。

地図がない、GPSもないし、道に標識なんてないから、どんぐらい進んどるか分からん。

試しに、スタートからどのくらい進んどるか、インド人に訪ねてみるんやけど、

『20km』

っていう人もおれば、

『50km』

っていう人もおって、正確な距離が分からん。

ほんま、ようそんなに分からんことを堂々と話せるもんやと、適当さに呆れる。

もっとガンガンに進みたいのに、虚ろな目でトボトボ歩く金太郎に、だんだん腹が立ち始めた。




『おめー、しっかり歩け、ハゲジジイ!』



小学生レベルの言葉で罵る。

伝わるはずもないのだが、声のトーンで怒ってるのが分かるらしい。

目をチラッと向けて、2秒くらい頑張ったふりをする、ほんでまたのんびりモードに戻る。

またそれも腹が立つ。



出発の時に買った、エサが底をつきた。

今日は村で手に入れんといけん。



『このエサはこれから通る村から持ってきたものやから、村で聞けば簡単に手には入るよ』


出発前の情報で、そう聞いてたから、エサについて心配はしてなかった。

出発前に覚えた言葉で、村のおっちゃんに尋ねる。




『ムジェ.ウート.カ.チャラ.レナヘ!』
(ラクダのエサが買いたいです。)




決まった。

完璧に伝わっている。

覚えた甲斐があった。

と思ったが、何やら反応が悪い。





『ムジェ.ウート.カ.チャラ.レナヘ!』






『ムジェ.ウート.カ.チャラ.レナヘ!』








『ムジェ.ウート.カ.チャラ.レナヘーッ!!』








いくら連発しても、反応がいまいちや。

なんだよ、どうしたんだよ。

すると、英語が話せるにーちゃんが出てきて聞く。





『何って名前のエサ?』










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ふぁっつ?

え、エサに銘柄とかあるの?

基本、草ならなんでも食うんちゃうの?

てか、村人は知っとるんちゃうの?

はてなマークがフワフワ浮かんでいたが、ハッとする。






『ここの人、ラクダについてなんも知らんのや。』






街中での異常な歓声。

これは全て僕に降り注ぐ大歓声かと思い込んでいたが、そうやなかったんや。

観光地からはもうずいぶん離れた。

ラクダを目にすることなんて、ほとんどない村。

そんな中、ラクダが何を食べるかなんて知っとる人はおらん。

出発前に情報を貰ったおっちゃん、彼はエサの名前を知っとる。

やから、そのエサの名前で尋ねれば、手にはいるんだろう。

しかし、僕は前情報に安心して、なまえなんて知らん。

おまけにエサは全部食いつくしてしまっている。

どうしまひょうか、途方に暮れていると、

『これちゃうか?』

と、気のきくおっちゃんがエサを持って来てくれた。

『おー、完璧や、完全にそれや!!』

現れたのは見た目がバッチリ同じエサ。

えかったー。

意気揚々と出発した。

が…



昼時、ランチやでー!

と、エサを差し出すも、

食わない。

クンクン嗅いで、プイッと顔を背ける。



『おいおい、なんでやねん!』

『全く同じエサやん!』

『何が不満やねん、食えよ、食わんと進まれへんやろ!』



無理矢理顔をエサに近付ける。

が、

『もー、やめてっ!!!』

って顔して怒る。

結局、金太郎はこの昼飯を食わずに終わった。



分からん、どう違うんや、どの飯なら食うんや。

1つだけ、金太郎が食べる物を知っていた。





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道端に生えてるこの木。

しゃあない、しばらくこれで食い繋ぐしかない。

美味しそうに、青々と繁る木に連れて行き、無くなっては、別の木に連れていき。

完全に遊牧民生活。

別にええやん、って思うかもしれんけど、これやとまずい事がある。

金太郎さんは、お上品に、一房ちぎっては、ゆっくりと咀嚼する。

それが、もう、箱入り娘のお嬢さんよりも、お上品なのだ。

いくら時間をかけても、そんなんやったら、僕ですら、お腹一杯にならん。

最初は、よしよし、食えよーって思って見てたけど、だんだんイライラしてくる。

『さっさと食えよ、そんなんやったら、
全然前に進まれへんやろ!』

金太郎にしたら、いい迷惑である。

僕が、エサの名前を知っていればよかっただけの話。

やけど、先に進みたいって思う僕の気持ちと、金太郎のペースが全く噛み合わず、もどかしさが募る。

こうして、予期せぬ遊牧民生活が始まる。




日が暮れてきた。

長いような、短いような1日。

真っ暗になる前に寝床を探さないと。

そう思ったタイミングで、なんとも調子のいい若いにーちゃんが現れる。

『ヘイ、ブラザー、おもろいことやってんのー!うちに泊まっていかねーか!?』

なんともありがたい、早速甘えようではないか。



どこが家ですか?

『おー、こっからちょいと右に外れた村なんだけどよ、まー1kmくらいやな。』

めっちゃ近いやん、是非行かせてくれ!

『おー、いいぜいいぜ!』

やった、今夜は安心して眠れる。

『あ、俺はバイクやから、先帰ってるわ、この道真っ直ぐ行って、左手の家やからな!』

ブーン。

行っちゃったよ。めっちゃざっくりした説明だけ残して。

まあ、行けば分かるよな。

そう思い、彼の後を追う。

が。

なんぼ歩いても、家らしきものは現れない。

1km、2km、3km…

ほんまにあるんけ。

不安が募る中、ようやく左手に家らしきものが見えてきた!

『やったー、着いたぞー!!!』

今日は安心して眠れる、そんな喜びと共に家に寄っていく。





家の前には、おばちゃんがいた。

『こんばんはー!泊めて貰えるみたいで、ありがとうございやすー!!』


おばちゃんの横には一匹のバッファローがいた。

『いやー、心細かったとこなんすー、ほんまありがとうございやすー!』




完全に家の前に着いた時、ある異変がおこる。




『パフーン!!!!!』





おばちゃんの横にいた、バッファローが暴れ始めたのだ。


ゲっ、まずい。




話は少し逸れるが、僕はラクダ旅を初めてから、ラクダの祖先は恐竜やと思うようになった。

なぜかというと、まずこのフォルム。



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完全にブラキオサウルスとしか思えない。



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加えて、どこのどんな動物も、ラクダを目にすると一目散に逃げ出す。

時には、スッテンコロリンする牛もいるほど。

それくらい、ラクダは他の動物から恐れられている。





その、恐竜を目にしたバッファローは暴れ始めたのだ。



ゲっまずい。

なぜそう思ったかというと、そのおばちゃんが右手にバケツを提げていたからだ。

すぐに気付いた。

おばちゃんは、バッファローから搾乳するとこやったんだ。



旅に出て知ったことだが、バッファローの搾乳は、かなり骨がおれる。

まず、子牛を近付け、母牛の乳が出る状態をつくる。

ほんで、子牛が飲んでしまわないよう、子牛を遠ざける。

牛をなるべく刺激しないような状況をつくり、初めて搾乳ができる。

これだけの大仕事を終え、さぁ乳を搾るぞ、というタイミングで、百獣の王、金太郎が現れたのだ。

一瞬、空気が凍り付くのを感じた。

その直後、おばちゃんの怒りの混じった悲鳴が轟く。

それを聞き付けた、亭主が、鬼のような形相で現れる。




『おいてめぇーーーーー!!!!
何しに来やがったクソがーー!
さっさとあっちへ行きやがれ、
二度と近づくなボケぇーー@%&#$¥@&&%¥¥』



まさに悲劇とはこのことか。

僕の言葉なんて一言たりとも伝わらなかった。




もう日が暮れた。

日中は僕たちはヒーロー。

だけど、日が暮れると現地人の態度は一変する。

真っ暗な中、ラクダを連れた外国人が村を徘徊している。

この上なく気持ちが悪いだろう。

村人と遭遇するたび、

『シッシッ』

っと、追い返される。

もう真っ暗だ。

さすがに堪えた。

凄まじい孤独感の中思う。

『なんでこんなこと始めてしまったんだろう』

なんもおもんない、

しんどい、

帰りたい。

自分がしていることの無意味さに悲しくなる。



それからしばらく歩き続けると、金太郎が初めて自分から足をついた。

今日はもう無理だ。

真っ暗な荒野が、孤独感を煽った。















出発前: http://masahirourabayashi.hatenablog.com/entry/2017/01/03/111033

第一話: http://masahirourabayashi.hatenablog.com/entry/2017/01/26/183646

第二話:http://masahirourabayashi.hatenablog.com/entry/2017/01/27/173210

第三話: http://masahirourabayashi.hatenablog.com/entry/2017/01/28/164651

第三話 金太郎の正体

荒野の朝は寒い。

朝起きると、テントの結露が凍っていた。

ここは灼熱のインドちゃうんかい!

それもそのはず。

いくらインドといえど、今は冬。

しかも北部の砂漠地帯だ。

がっつり白い息が出る。

しかも、日中は35℃くらいまで、気温が上昇する。

体温調節が辛い。




かじかむ手を擦りながら、出発の準備をする。

出発の為に、荷物諸々をパッキングするのだが、これがなかなかの作業だ。

20kgはあるサドルを乗せ、きつく縛り上げる。

これが甘いと、途中でサドルごと落下し、
『ラクダから落(らく)だ』という事態にもなりかねない。

サドルを縛ると、その上に、エサ、水、布団、荷物を縛り付け、完成となる。




慣れない手つきでパッキングを始めた。

が、ある異変に気付く。





『ん?あれあれ?』





じっと目を凝らして、金太郎を見つめる。

金太郎の様子がおかしいのだ。






『ない、ないぞ。』





あるはずのものがない。






『か、髪が、金太郎の髪がない!!!!!』








そう、金太郎は禿げていた。

それも見事なほどに。





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おーい、どうした金太郎、何があった!?

地面には見るも無惨に金太郎の髪の毛が散乱している。

何かに襲われたか、いやそんな物音はしなかった。

じゃあ、一体なぜだ。

しばらく、金太郎の様子をうかがう。

すると、金太郎はのそのそと昨日逃げないように縛り付けた木に寄り、全力で首を擦り付けているではないか。

これだ、完全にこれだ。

痒い首を木に擦り付けて、毛が抜けてしまったんだ。

あぁ、なんてことをしてしまったんだ。

僕がラクダのケアを知らないばかりに、金太郎をこんなにもみすぼらしい姿に変貌させてしまったんだ。

ごめんよ、金太郎…




ん?

まてよ、たかが木に擦り付けただけで、禿げるか?

そんなんやったら、全部のラクダがつるっぱげのはずじゃないのか?

そんな疑問を抱えながら歩いていると、

一人のおっちゃんが寄ってきた。










『やあ、ネパール人、どうした、そんな弱った病気のラクダを持って。』



耳を疑う。今なんと言った?

『だから、病気のラクダ持ってなにしてんだ』



おいまて、これはこないだ買ったばかりのラクダだぞ、病気だなんて。

『はっはっは、バカだな、お前そんなラクダ買ってどうするってんだ。』




『いくらで買ったんだ?』

40000円。

『あほやなー、そんなラクダ5000円の価値もないぜ、俺ならタダでもいらねーな。はっはっは。』




話によると、おっちゃんのお父さんはラクダ売りの仕事をしている。

おっちゃんは教師をやってるから、英語が喋れる。

よくよく話を聞くと、金太郎の正体が明らかになってきた。




『お前、こいつはもうすぐ死ぬよ、18歳(人間でいう60歳)くらいやし、何より弱ってる。』

なんやと、俺は12歳(40歳)と聞いたぞ。

『体をみてみろ、こんなに痩せほそって、弱ってる証拠よ。』

確かに、言われてみれば、細すぎる気もする。

『それにな、こいつは皮膚の病気だ。薬を与えないと死ぬぞ。』

なんやと、そこまでの病気かよ。

『どこまで行くつもりだ』

ジャイサルメールまで。

『はっはっは、無理無理。途中で死んじゃうね。』






頭が真っ白になる。

要はこうだ、

・×12歳→○18歳
・肌の病気
・弱っている
・×40000円→5000円以下


よく見てみると、買ったはずの鉄製のサドルも、木製の安いサドルに取り換えられている。

そこで気付く。




『騙された』




病気に加え、高齢の弱ったラクダを、無知なアホ日本人に売りつけた、そういうシナリオだ。

多少は多めに取られていることは覚悟してたが、ここまでとは。

どおりでおかしいと思った。

歩くのもよたよたしてるし、おもいのほか遅い。

人間でいうと、定年退職したお爺ちゃん。

そのお爺ちゃんに、100kg以上の荷物を担がせ、600km歩く。

あぁ、なんてこった、なんて過酷な旅なんや。





でも、僕たちはもう出発してしまったんや。

ここで戻る訳にはいかない。



急いで村の病院に駆け込む。

すると、普通に私服のにーちゃんが出てきて、

『あーね、病気ね、オッケー!』

ほんまそんぐらいフランクに、2本のぶっとい注射針を、金太郎の首筋にぶちこむ。






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痛みに暴れる金太郎の鳴き声が、虚しく響いた。






病気のお爺ちゃんラクダ。

それが金太郎の正体だった。


大きな絶望と共に、僕たちは歩くしかなかった。

『今日からは金さんって呼ぶね。』









出発前: http://masahirourabayashi.hatenablog.com/entry/2017/01/03/111033

第一話: http://masahirourabayashi.hatenablog.com/entry/2017/01/26/183646

第二話:http://masahirourabayashi.hatenablog.com/entry/2017/01/27/173210

インドラクダ旅 第二話 思うてたんと違ーう!!

金太郎にまたがり、誇らしげな気持ちで悠々と歩む僕がいた。

どんな冒険が待ち受けているんだろう、そんなワクワクと共に。

旅路の情報をくれたおっちゃんは言った。




『砂漠を歩いて村を目指す』




静寂に包まれ、そこで聴こえるのは、ラクダと僕の息づかいだけ。

広大な砂漠の中、僕は自分自身を見つめる。

完全な孤独の中、僕は僕自身と語らい、新たな自分を見出だしていく。
















はずだった。

はずだった、

はずだったんだ。









出発した街を抜けた。













おっと、早速、村が現れた。

そうだよなー、ここは大きな観光地、プシュカルの近く。

近くに村があるのも無理はない。





村を抜ける。











おやおや、また村がやってきたぞ。

さすがプシュカルやなー、商売で溢れてる証拠よ。




村を抜ける。













あらやだ、また村がやってきたよ。






村を抜ける。






おやまあ、また村が…






っておいこらー!!!!!!!!!

村ばっかやないかーい!!

どこに砂漠があるんじゃーい!!



嫌な予感が頭を過る。

『も、もしや…』



予感は的中した。

そう、インドには


『砂漠なんてなかった』


のだ。



そこではっとする。

世界第二位の人口を誇るインド。

その人の数は半端ではない。


電車に乗れば分かる。

ジェネラルクラスと呼ばれる、最も安い席。

そこは、地獄と見まがうような空間。

電車の上の方にある鞄置き場にすら人は座り、無いスペースを押し合いへし合い。

時には出発後に、溢れだした人々が車体から落下する。

残るのは落下した人々の呻き声にも似た悲痛な叫びと、生き残った人々の恍惚な笑み。

まるで、奴隷列車のようなのだ。

電車に乗るのすら、命懸け、そのくらいインドは人で溢れかえっているのだ。



その人々が住む場所をこしらえる。

すると自然と人々は溢れかえり、住めるはずもないような場所にまで、家が存在する、それが集まり村と化す。


いや、出発前におっちゃんが言った事は間違っていなかった。

砂漠(というか荒野)の中に、人が無理矢理住んでいる。


ってことはだ、

僕はこれから、とどまることのないインド人たちの視線を浴びながら、600kmを切り抜けていくことになる。





終わった。






『静寂の中で自分と語るお洒落な日々』

その夢は儚く散り、

『インドにまみれて、まみれて、まみれ倒す日々』

が始まったのだ。

せっかく気持ちを孤独モードに切り替えてたのに。

時間を返せー!!




考えてみてほしい。

訪れる村は、観光客など訪れるはずもない村。

そんな中を、ただ歩くだけならまだしも、

へんてこな日本人が、ラクダに乗って歩いてるのだ。

加えて、相手は世界でもトップクラスの好奇心を持ち合わせるインド人。

どれくらい注目を浴びるか。

今考えてもらった1000倍は視線を浴びるといっても過言ではない。

まるで、ジャイアンツの優勝パレード。

ひとときならいい。

それが毎日ずっととなると。

このボディーブローが後々に効いてくることとなる。



物凄い視線を浴び、慣れないラクダに悪戦苦闘している間に、初日の日は暮れた。

寝床を探さないと。

とにかく、人目につかないとこを、

そう思い、村の奥地の荒野にたどり着く。



『ここなら大丈夫やろ。』



落ち着いたところで火を起こす。

ガスなど持ち合わせていないので、飯を食べるのひとつにしても、火から起こさなければならない。(マッチは使うよ。笑)




長い一日に終わりを告げる。

大きく変わった旅。

本当にやりきれるんだろうか。

遠のく意識の中、



『おーい、お前なんしとーと?』



まじかよ、こんなとこにもおるんかい。

落ち着かない気持ちで眠りについた。






翌朝、目覚めると、衝撃の状況が目に飛び込んでくることとなる。












出発前: http://masahirourabayashi.hatenablog.com/entry/2017/01/03/111033

第一話: http://masahirourabayashi.hatenablog.com/entry/2017/01/26/183646

第一話 出発

1月4日、僕はラクダと共に旅に出た。

600キロ、18日間にわたる大冒険に。




インドをどう旅したら楽しいかな、あ、そうやインドにはラクダがいる!

そんな簡単な思い付きでインドまでやってきた。

5年前に一度インドを訪れたとき、ラクダがいることを知った。

その時のキュートなラクダが僕の心にはあった。

おもろい旅になりそうやな、そう思いながらインドの街、プシュカルへやってきた。

なんでもこの街、プシュカルでは年に一度インド中のラクダが売買されるラクダ市というものが開催されているらしい。

とりあえずこの街にいけばラクダが買えるはずだ。

そう思いながら、プシュカルへやってきた。


そこには確かにラクダがいた。

が、ここで話が変わる。

いや、まじででかすぎっから!

こんなでかかったっけ、いやいや、まじすか。

加えて、なんかほとんどのラクダが暴れとる。

口から泡吹いて叫んでたり、

なんか胃袋か分からんけど、口から出して怒っとる。

いやいや、こんなんやなかったってラクダ。

もっと可愛かったから、予想してたんと違うんすけど。

一人のラクダ使いに聞く、なんで怒ってんのよ、ラクダさんは。

驚きの言葉が帰ってくる。









『発情期だからね、あんま近づくと噛まれるよ、気を付けな』













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こんな感じ。








え、まじすか、なんって?

発情期?

終わった。

もうそりゃ一年に一度の発情期。

しかもこういうとこにいるラクダはほとんどがオス。
(メスは村で飼われてて、子どもを産むのに専念するらしい)

もームラムラして爆発しちゃってるよね。

あーこれはあかんな。

運が悪かった。

他の時だったらね、やれたんやけど。

そう言い聞かせて、一度退散した。



それから、2週間他の街を旅してたんやけど、どうしてもずっとラクダのこと考えてしまう。

完全に恋をしていた。笑

そんときに、友人と電話してるときに言われたことばを思い出した。

『まあ、大体のことはやってみたらどうってことないよな』

『やってみて、止めたらええんやない?』

そうや、ここで止めたら出来たか出来んかったか分からんやん、あかんかった時に初めて諦めればいいんや、そんなに人生詰んでない。

別の行き先の電車のチケットを取っていたけど、こういう事は新鮮さが大事。

またビビる前にとっとと始める。

急いでプシュカルへ戻る。



そこから、2週間くらいラクダに没頭した。

数々のラクダツアー会社を回って、ラクダについて聞いて回った。

どういうラクダがいいラクダ?

年はどうやってわかる?

使い方は?

値段は?

いろんなラクダに乗った、調べた、

けど、

全くわからん!

そりゃラクダ商売人が相手。

簡単には手の内を明かさん。

もうどのラクダに乗って歩いてても、

『そのラクダは病気だ、うちのを買え』

そればっかいわれる。

もうほんと、何が正しいかわからんし、誰が正しいこと言ってるか分からん。

そうしてるうちに、頑張って高めた勇気がしぼんでいく。

あかん、これはあかんぞ、

もういつまで経っても分からへん。

多分こういう時はアホにならんといけん。

上手に騙されないようにやろうとしても、いつまで経ってもやれん。


決めた、今のってるラクダにする!

後ろ髪が金ぴかに光ってる、おとなしめのラクダ、こいつを金太郎と名付け、即決した。


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ラクダで旅をしている人たちはいる。

ラクダの商売人たちだ。

ラクダの商売人たちは、別の街のラクダを買って連れてくる。

その旅路を参考にする。






かつて、その経験がある人たちから情報を集めた。






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・これが目的地までに通過する村の名前。これを訪ねながら進む。

・目的地は約600km先のジャイサルメールという街。


・そこまでは砂漠地帯が広がる。

・ほとんど飯屋はないから、自炊。

・宿もないから、野宿。

・食料と水は途中の村で調達できる。

・ラクダの御飯は村で買える。一日300円くらい。


ラクダの御飯代が俺の飯代よりも高いことに笑うしかない。








インドに着いてから約1ヶ月。

ようやく出発の時がきた。

どんな旅になるんやろうか、思い描いたのは広大な砂漠をラクダと共に歩む壮大な20日間。

の、はずだった。

ラクダを買った

今日ラクダを買った。

















ん?




ラクダ?




買った?




そう、




ラクダ、




買ったの。










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こいつ。





『This is my camel.』

こんな言葉使う日がくるとは思ってもなかったよ。笑





スペック

・名前は『金太郎』(命名 俺)

・年は12歳。(人間でいうと40歳くらいのおっ
ちゃん)

・約40000円。

・比較的穏やか。他のラクダよりもビビり。

・そのくせ、よくサボろうとする。

・ゲップがめっちゃ臭い。歩いてる時、顔の高さほぼ同じとこやから、ダイレクトにきて、きつい。

その他未知数。




鳥取砂丘で、一稼ぎしようと思ってね!



ってのは嘘で、

新たなチャレンジに挑む為。



『インドの砂漠地帯600kmをラクダで横断』



どの地図にも道は載ってない。

ある情報はところどころの中継地点となる村の名前と、コンパスのみ。

ガイドの同伴もない。

途中に宿はないので、基本的に野宿になる。

食堂もないから、自分で作らなければならない。

最終的にはゴール地点で、ラクダを売らなければならないというミッションもある。

600km、約20日間の大冒険が始まる。



たかだか1週間のラクダ調教を経て、

出発します。笑

バカです。

自分でも思います。

んなことして何になるんて、

多分なんにもならないよ。

でも、やってみたい。

達成したあとにどんな気持ちになるか知りたい。

ひま潰し。

ただのひま潰しに、命かけやす。

これまで旅で培った力、全部出しきって、

全力で駆け抜ける。

2017年1月4日、出発。



ほんまにできるんやろうか。


おもろかったらブログで書こうと思いやす。

ひま潰しに生きる

旅に出て、もうすぐ9ヶ月が経つ。

年末やから、ちょっとこの1年、いや、この旅を振り返ろうかな。

南アフリカ共和国から出発して、アフリカ大陸、そっから東へ東へ、日本を目指してえっちらおっちら。

只今インドでございます。





そりゃあもう、毎日がはらはらの連続で、

冒険たっぷり。

スリル満点。

出会いと別れの連続で。

ロマンスあり。

笑いあり。

壮大な絶景を目の前にし、見つめ直す日々。

何千年も前に産み出された圧倒的な建造物に胸を打たれ、

初めて踏み入れる地に、ドキドキワクワク。

会うはずもなかった異国の人と心が通じあった喜びは言葉にできない。

前代未聞のアドベンチャーワールド。

そんな中に、僕はいる。


































って感じでふりかえるんやろーなーって思ってたよ。























んなわけあるかーい!!!!!!!!!!

基本的に90%は暇やで。








なんなら、日本いるときよりフェイスブックとか見てるで。笑

友達に、暇やー、とか、ラインしてるで。笑

たまに寂しいって電話するで。笑

海外まで行って何しとんねーん、って突っ込み聞こえそうな気がするんやけど、

これでいいって思ってるで。笑



90%暇やから、残りの10%がたまに爆発する。

暇やー、暇やーって、暇にまみれるから、

『もーくそつまらん、なんかしてーっ!!』

て、爆発する。

そうなったら、自然と心が満たされるほうに動いてく。

暇すぎて死にそうになるから。笑


最近、やることに、意味を求めんくなった。

誰の為にとか、

何の為にとか、

これやったらこうなるからっていう方程式的なものが壊れた。

たまにやってることが無意味すぎて人生に絶望することもあるけど。笑

そもそも、旅に意味なんてない。

生きることも意味なんてないんやないかなーって思う。

どんな社会貢献してる人も、

どんな政治家も、

どんな有名人も、

やった事が喜ばれる相手もいれば、

悲しんだり、苦しんだりする相手もいる。

受けとる相手によって意味なんてかわっちまうんだから、

意味なんて気にしたって仕方ない。

全部ひま潰しやと思う。


ひまやから、時間潰しになんかする。

ひますぎて、どうしようもないから、

人と語るし、

夢見るし、

遊ぶし、

仕事するし。


どー使ってもえぇんやなーって思う。

どーせひまなら、自分がおもろい方がいいから、

そのおもろいことに命かける。

ひますぎて気付いたこと。



そろそろ、ひまで死にそうやから、なんかやろっと。


はっぴーにゅーいやー!!!

思いがけず来た勝負のとき

カザフスタンに入国した。

いやー、寒くなってきたなー、野宿できるかなーとか思いながら入国した。

が...















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おーまいごっと。












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おーまいごっと。





おいおい、いくら寒い言うても、いきなり変わりすぎやろ!?

野宿なんていっとる場合やない!!

今まで味わったことのないレベルの寒さ。

これが、カザフスタンさんですか、

なめてました、すいません。






ってことで、命の危険を感じるレベルの寒さなので、急いで宿を探し回った。

しかし...





『ぎゅるぎゅるぎゅる~...』





ま、まずい、

俺のウィークポイントである、腹の弱さがここにきて寒さにやられ始めた。

急いでトイレを探さなければ...

30分くらい探し回っただろうか。

















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天使のマーク発見!!!!!

誰でもこんな経験をしたことがあるだろう。

そしてこの天使マークを見て俺は天に召されるように、入場ゲートをくぐった。

並みいるカザフスタン人を押し退け、ようやく便器まで辿り着いた。





『勝った...』





人生であとどれくらい、こんな安堵感に包まれることがあるだろうか。

まるでお母さんの腕に包まれているようだ。




んなことを言っている場合じゃない。

便器に腰を下ろすまで安心はできない。

よし、いくぞっ!!

ようやく便器エリアに辿り着いた。



















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ふぇ!?





お分かり頂けるだろうか。

あるはずのものがない。



『またまた~、カザフスタンさん、ちゃん大きいのする場所に案内してちょーだいよ~』



と心の中でつぶやき、辺りを見渡した。















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な、ない!!!!!


あるはずのものが、ない!!

いや、絶対になくてはならないものが!!!

う、嘘だろ。

こんなモロだしで用を足せというのか。

何かの間違いだ。

野に放つときだって、人は何かしらの陰に隠れて用を足すだろう。

人間の正常な精神で、こんな用の足し方が許されるわけがない...

恐る恐る、視線を横にずらす。





すると...

いるではないか、便器にまたがり、こちらを向いて、にんまりとした表情で、至福の時を過ごすお爺ちゃんが!

なんだ、この並外れた精神力は。

この世で唯一といってもいい、自分だけの空間のはずが。

お父さんも、お母さんも、先生も、こんな状況をどう切り抜ければいいか教えてくれなかったぞ!!!

そうこうしているうちに、俺のお腹のリミットは、限界に達する。

もう、どうにでもなれっ!!!

一心不乱に便器にしがみつき...


ー以下省略ー





数分後、僕は少しのはにかみと、戦を切り抜けた勇敢な侍のような表情で、周りカザフスタン人を見つめついた。

また、少し僕は成長した。

もっといける、まだまだ攻めれる。

そんな確かな手応えと共にトイレを後にするのであった。






最後に、すいませんでした。